ラブ・スーパーノヴァ

車で家の近くまで送ってもらった。帰りの車の中でも、二人の話は尽きなかった。

「それじゃ、本はまた今度返すから」

倫が車から降りようとすると薫は手を取って引き止めた。

「倫ちゃん・・・君は不思議な人だね。」
「・・・不思議?」
「今日1日で、俺をすごく幸せな気分にしてくれた。ありがとう。」

そう言って、倫の手の甲を優しく撫で、小指にキスした。

「!!」

どきん、と心臓が鳴る。

薫の伏せた長いまつげが、綺麗な頬に影を落とす。
王子様とはこういう人のことを言うのだなあと、倫はぼんやりと思った。

「また、必ず会いに来て。約束だ。・・・おやすみ。」

倫はおやすみ、と慌てて返事をして車を降りた。
振り向かず、家へと走る。

玄関の前で手を見つめた。薫の唇の感触が小指に残っている。

突然昨日のキスが思い出された。冷たい唇・・・。

だめだめ!高校生じゃない!17歳よ!犯罪だわ!

そして、自分の家の古ぼけた玄関を眺めて改めて、住む世界が違うのだと感じた。

そうだ、あんなお金持ちの家で育った人とは、価値観が違うのだ・・・。

倫はかかえている本を見つめた。

これを返したらもう会うのはよそう・・・。