ラブ・スーパーノヴァ

薫は再び戻ってくると、英語の論文を印刷したものを持ってきた。

「・・・あんた、英語で読んだの?」

薫はそうだよ、と何ともない様子で答えた。そりゃ、通常論文は英語で書かれるんだけど・・・。
倫は心底驚いた。

軽く目を通しても、専門用語だらけで、倫でも読むのには時間がかかりそうだった。いや、時間をかけても理解できる自信はない。

薫は論文の説明を始めた。

この子・・・すごい天才なんじゃ・・・。

倫は驚いていたが、次第に薫の話に引き込まれ、二人で論文を床に広げて、ここが素晴らしいけど、この部分は違うと思うなどと延々と語り合った。

倫は紙の裏に計算式を長々と書き、集中しすぎて時間がたつのを忘れた。

気がつくと10時を過ぎていた。

「え!?もう10時!??帰らなきゃ。キヨちゃんが心配してる。」

薫は笑ってちらばった紙をまとめて倫に渡した。

「ありがとう。すごく楽しかった。ゼミより集中したわ。」
「俺も楽しかった・・・。また来てくれる?」

倫はうん、と頷いて部屋を出た。
薫と一緒になって玄関に来た時、突然玄関が開き、複数の男性が入ってきた。

「おぉ、薫、昨日は・・・」

先頭にいた大柄の50代くらいの男性が声をかけた。

「伯父さん、お帰りなさい」

薫は軽く頭を下げた。つられて倫も軽く頭を下げる。
薫の伯父は倫を見つめて言った。

「・・・そちらは?」
「あぁ、この人は友達の小山田倫さん。」

薫は倫の腰を軽く引き寄せ紹介した。
倫は「はじめまして・・・」と言ったが、そういえばこの人、昨日のパーティで挨拶してた人だと気がついた。

「小山田・・・」
薫の伯父は倫を凝視したが、後ろの男性が声をかけると、我に返った。

「薫の伯父の九条成明です。薫と今後も仲良くしてやってください。」
では失礼・・・と言って去っていった。

なんかすごく顔を凝視されてたけど、何かついてるのかな・・・。

薫もなにかおかしいといった顔をしていたが、倫と目が合うと行こう、と外へでるように促した。