ラブ・スーパーノヴァ

そう・・・としか倫は言えなかった。なんだか薫が寂しそうだったからだ。

「ねえ、昨日、なんであのホテルにいたの?高校生が行くところとも思えないんだけど・・・」

倫は話題を変えようと、昨日の話をした。
薫はくすっと笑って言った。

「やっぱり気がついてなかったんだ。昨日、倫ちゃんが仕事してた会場に俺もいたんだよ。」

倫はきょとんとした。昨日は確か政治家のパーティだったはずだ。

「あなた、政治家となんか関係あんの?」
「昨日の主催者が俺の伯父なんだ。勉強のために来いっていわれて、たまたま行ったんだ」

倫は思い出そうとしたが、薫のような若い男性がいたように思えなかった。忙しかったからそれどころではなかったからかもしれない。

「俺好みの可愛い子がいるなあって見てたんだ。愛想笑いで顔引きつってんのがまた可愛くて。」

薫はくすっと笑った。その優しい笑顔に倫はまたもや不覚にもどきりとした。

「・・・あんな年上の女の人に追いかけられて、女たらしになるにはまだ早いわよ。」

倫は照れ隠しのためにそっけなく言った。

「俺は何もしてないよ。向こうが勝手に勘違いしたんだ。女の人のほうから寄ってくるのに、俺が悪いの?」
薫が悪びれる風でもなく言った。

倫はあきれた。これは天性の女たらしだ。こういうやつが一番たちが悪い。

そろそろ帰ろう、あまり長いこと二人でいたら、いくら’硬い’倫でも自信がなくなる。薫はそう思わせる色気があった。

「あの・・・じゃあ、私、もう帰るね」

そう言って立ち上がった。
薫は驚いて倫の腕を掴んだ。

「もう?まだ来たばかりじゃない。もう少しいなよ。」
「でも・・・」

倫は自分より20センチは大きい薫を見上げた。

「この前読んだオーストラリアの学者の論文、すごい面白かったんだ。持ってくるから待ってて」

そう言って薫は出て行った。
倫はなぜ薫が倫を家に招待したり、帰るのを引き止めるのかわからなかった。

(金持ちじゃない女の子が物珍しいだけかな・・・)