政子に会う約束の時間まで、薫は解説しながら京都の街を案内してくれた。
薫の神社や寺、日本の歴史、仏教の知識の深さに倫は何度も感嘆の声を上げた。
夕食を済ませ、政子の家に向かうタクシーの中で倫は尋ねた。
「・・・あのさぁ、前から聞きたかったんだけど、その知識をどうやって頭に留めておけるの?一端覚えたんだとしても、どんどん忘れていっちゃわない?」
「特別なことなんかないよ。どれも興味を持ってれば忘れない」
薫が何ともないといった風に答えた。
私とは頭の構造が違うのだな・・・と倫は自分を納得させた。
「なにか苦手な分野ってないの?運動が出来ないとか、歌が下手だとか・・・」
「苦手?そうだな・・・。小さい頃からテニスとサッカーと水泳やってたから、運動するのは好きだよ。歌も特別好きでもないけど、小学生の時に合唱団入ってたから苦手ってこともないし・・・」
薫の’弱点’を見つけようと思った倫は、そうですか・・・と大人しく引き下がるしかなかった。
「絵は・・・。そうだな、絵は描くの・・・苦手だね」
薫が少し表情を曇らせて答えた。
言いたくないことを言わされているといったような口調だった。
倫はなんだか申し訳ない気持ちになって慌てて取り繕った。
「でもきっとあなたのことだから、苦手って言っても標準よりは上手なんでしょうね」
「上手い下手は関係ないよ。’苦手’なんだ。描けと言われれば描くけど、鑑賞する方が好きだね」
「ふーん・・・」
薫は何かを思い出しているのか、それから黙ってしまった。
薫はたまにこうやってどこか寂しそうな悲しそうな表情をする。
倫は、薫が九条という家を嫌っているようなことを口にすることが気になっていた。
古くから続く家だし、倫にはわからないプレッシャーや不自由さのせいだろうと思って特に聞き出そうともしなかったが、こうした表情を見ると何かしてあげたくなってくるのだった。
薫が話したくなったら話してくれるに違いない。無理やり聞き出すことが効果的だとは思えなかった。
薫の神社や寺、日本の歴史、仏教の知識の深さに倫は何度も感嘆の声を上げた。
夕食を済ませ、政子の家に向かうタクシーの中で倫は尋ねた。
「・・・あのさぁ、前から聞きたかったんだけど、その知識をどうやって頭に留めておけるの?一端覚えたんだとしても、どんどん忘れていっちゃわない?」
「特別なことなんかないよ。どれも興味を持ってれば忘れない」
薫が何ともないといった風に答えた。
私とは頭の構造が違うのだな・・・と倫は自分を納得させた。
「なにか苦手な分野ってないの?運動が出来ないとか、歌が下手だとか・・・」
「苦手?そうだな・・・。小さい頃からテニスとサッカーと水泳やってたから、運動するのは好きだよ。歌も特別好きでもないけど、小学生の時に合唱団入ってたから苦手ってこともないし・・・」
薫の’弱点’を見つけようと思った倫は、そうですか・・・と大人しく引き下がるしかなかった。
「絵は・・・。そうだな、絵は描くの・・・苦手だね」
薫が少し表情を曇らせて答えた。
言いたくないことを言わされているといったような口調だった。
倫はなんだか申し訳ない気持ちになって慌てて取り繕った。
「でもきっとあなたのことだから、苦手って言っても標準よりは上手なんでしょうね」
「上手い下手は関係ないよ。’苦手’なんだ。描けと言われれば描くけど、鑑賞する方が好きだね」
「ふーん・・・」
薫は何かを思い出しているのか、それから黙ってしまった。
薫はたまにこうやってどこか寂しそうな悲しそうな表情をする。
倫は、薫が九条という家を嫌っているようなことを口にすることが気になっていた。
古くから続く家だし、倫にはわからないプレッシャーや不自由さのせいだろうと思って特に聞き出そうともしなかったが、こうした表情を見ると何かしてあげたくなってくるのだった。
薫が話したくなったら話してくれるに違いない。無理やり聞き出すことが効果的だとは思えなかった。

