ラブ・スーパーノヴァ

ふと優しい風が吹き、頬を優しく撫でた。

連理の賢木を見つめる薫の横顔は凛々しく、厳かな雰囲気を醸し出していた。
倫は自分がずっと昔の、平安時代の日本にでもいるかのような錯覚に陥った。

静かな神社を歩く、平安貴族の装束を身に纏った1人の若者・・・。

(その隣には・・・)

その隣を歩く自分を想像して、倫はドキリとした。

うっすらと茶色い瞳に髪・・・。日本人離れした顔つきに体型・・・。

倫はその瞬間、自分の血のことを強烈に意識した。

(純粋な日本人ではない・・・純粋な・・・)

今までそんな風に思ったことなどなかった。
しかし、この京都という街の雰囲気と、そこを歩く薫の姿が倫に今まで感じたことのない違和感を与えたのだった。

(じゃあ・・・なんで・・・?)

アメリカの血が入っていることに抵抗を感じるわけではない。キヨの愛した祖父のことは誇りに思っている。
倫が感じたのは周一郎に対する疑問だった。

何百年も前から続く九条家の血筋に、日本人以外の血が入ることに周一郎が抵抗を感じてないはずはなかった。

(どうしてお父さんはお母さんを選んだんだろう・・・。どうしてハーフのお母さんを・・・)

いくら子供に恵まれなかったとはいえ、歴史ある一族にとってそれがどんなにイレギュラーなことなのか、倫でも容易に想像ができた。

考えれば考えるほど周一郎のことがわからなくなってくる。
真実を知るのが怖くなってくる。

「・・・ちゃん・・・倫ちゃん」

薫に呼ばれてハッと顔を上げる。

「どうかした?大丈夫?」

薫が少し心配そうに倫を見つめた。

「うん・・・」
「疲れた?どこかで休もう」

薫が手を差し出す。倫は少し躊躇いがちに薫の手を取った。
胸の中の不安が少しずつ大きくなる。

果たして薫と、連理の賢木のように結ばれ続けるのだろうか・・・。