それから二週間ほど経った土曜日の朝。
倫と薫は新幹線で京都に向かっていた。
薫は倫の隣の席に座り、周一郎の姉に渡すために用意した日記の翻訳した用紙をチェックしている。倫は窓の外に目を向け、ものすごいスピードで駆け抜けていく景色を眺めていた。
キヨの体調はすぐに回復したが、しばらく様子を見るため薫には待ってもらっていた。
キヨには京都出身の大学の友人の実家に遊びに行くと嘘をついた。
倫はキヨに嘘をつく度に心に重い大きな石が溜まっていくような気がした。
やはりこのままではいけない。キヨにこれ以上嘘をつきたくない。
薫にも、そして自分にも。
薫との関係をはっきりさせて、キヨに全て話そう。
嘘をつくのは、これで最後にしよう・・・。
出発するまでは不安と罪悪感でいっぱいだった。
しかし、こうして薫と隣に座っていると、不思議と心が落ち着いてくる。
「緊張してる?」
薫が倫に尋ねた。
倫が薫を振り返る。
「ううん・・・・大丈夫」
薫は用紙をカバンにしまうと、倫の手を取って繋いだ。
「なんだか・・・信じられないな。倫ちゃんとこうして京都に一緒に行けるなんて」
薫が嬉しそうにしみじみと言った。
「何言ってんのよ。自分から誘ったくせに」
倫は照れて素っ気無く言った。
薫がいたずらっぽく笑い、倫の耳元で囁く。
「このまま、どこかに駆け落ちでもする?」
倫は顔を真っ赤にして声を上げた。
「馬鹿!!」
思った以上に大きな声が出てしまい、慌てて手で口を押さえる。
同じ列の他の乗客が驚いて倫と薫の方を見た。
倫は更に顔を赤くして無言で薫を睨んだ。
薫は声を殺して笑っている。
倫は怒って再び何か言おうと口を開きかけた。
薫が笑いながら人差し指を唇に当てて、シーと言って片目を瞑った。
その顔が色っぽく、倫はぐ・・・と口を噤んだ。
倫の負けだ。倫はため息をついた。
まともに取り合っていたらきりがない。
倫と薫は新幹線で京都に向かっていた。
薫は倫の隣の席に座り、周一郎の姉に渡すために用意した日記の翻訳した用紙をチェックしている。倫は窓の外に目を向け、ものすごいスピードで駆け抜けていく景色を眺めていた。
キヨの体調はすぐに回復したが、しばらく様子を見るため薫には待ってもらっていた。
キヨには京都出身の大学の友人の実家に遊びに行くと嘘をついた。
倫はキヨに嘘をつく度に心に重い大きな石が溜まっていくような気がした。
やはりこのままではいけない。キヨにこれ以上嘘をつきたくない。
薫にも、そして自分にも。
薫との関係をはっきりさせて、キヨに全て話そう。
嘘をつくのは、これで最後にしよう・・・。
出発するまでは不安と罪悪感でいっぱいだった。
しかし、こうして薫と隣に座っていると、不思議と心が落ち着いてくる。
「緊張してる?」
薫が倫に尋ねた。
倫が薫を振り返る。
「ううん・・・・大丈夫」
薫は用紙をカバンにしまうと、倫の手を取って繋いだ。
「なんだか・・・信じられないな。倫ちゃんとこうして京都に一緒に行けるなんて」
薫が嬉しそうにしみじみと言った。
「何言ってんのよ。自分から誘ったくせに」
倫は照れて素っ気無く言った。
薫がいたずらっぽく笑い、倫の耳元で囁く。
「このまま、どこかに駆け落ちでもする?」
倫は顔を真っ赤にして声を上げた。
「馬鹿!!」
思った以上に大きな声が出てしまい、慌てて手で口を押さえる。
同じ列の他の乗客が驚いて倫と薫の方を見た。
倫は更に顔を赤くして無言で薫を睨んだ。
薫は声を殺して笑っている。
倫は怒って再び何か言おうと口を開きかけた。
薫が笑いながら人差し指を唇に当てて、シーと言って片目を瞑った。
その顔が色っぽく、倫はぐ・・・と口を噤んだ。
倫の負けだ。倫はため息をついた。
まともに取り合っていたらきりがない。

