「どうして?どうしてだめ?」
「どうしてって・・・」
「君の寝顔が見たい」
倫の鼓動がこれ以上ないくらい早くなる。
(寝顔!??・・・無理!!絶対無理!!一緒の部屋で寝る・・・なんて絶対無理!!)
倫は何て言えばいいのかわからず口をパクパクさせた。
薫が途端に吹き出すと、アハハ!と大きな声で笑った。
「そんなに必死で抵抗しなくてもいいのに、傷つくなぁ。嘘だよ、嘘」
そしてもう一度耐えられないといった風に笑った。
倫はしばらく呆然と薫を眺めていたが、からかわれていたとわかると途端に怒りを爆発させた。
「ひどい!!人が真剣になってるのに笑ったりして・・・!!」
倫は立ち上がって帰ろうとした。
慌てて薫が倫の手を掴んで引き止める。
「待って!・・・ごめん、怒らないで」
薫が優しい声で謝る。
倫は怒りながら薫を見上げる。
倫が愛しくて仕方ないと言わんばかりに温かい瞳だった。
倫は内心ため息をついた。
薫にそんな瞳をされたら、どんなことだって許してしまう。
薫への想いが溢れ、胸が熱くなる。
二人で京都へ・・・。
キヨが知ったらと思うと胸が張り裂けそうだった。
(ちゃんとキヨちゃんに話そう・・・。そのためにも、何もかもはっきりさせなきゃ・・・)
倫は固く決意したのだった。

