ラブ・スーパーノヴァ

車を降りると、そこは東京とは思えない雰囲気の、木が生い茂ったとてつもなく大きい屋敷だった。

和と洋がまざった、趣のある家。場所的には成城になるのだろう。

倫は今更ながら帰りたいと思った。

だって、こんな大きい家だと思わなかったんだもん!

薫はさっさと門をくぐって先に進む。庭がこれまた広く、美しく剪定されている。

「おじゃまします・・・。」

倫は焦った。薫は、予想以上にすごい家の息子なのだろう。ジーパンにTシャツという自分の格好がものすごくそぐわない。

「倫ちゃん、こっち」

倫はとにかく早く本を見せてもらって、早々に退散しようと決めた。

倫は家の奥にある渡り廊下を渡った場所にある、書庫に連れていかれた。

「祖父の書庫なんだ。祖父が亡くなってからは俺しか使ってないんだけどね。」

そこは思ったより大きくなく、こじんまりとした4畳半ほどの部屋だった。

壁は全て本棚になっており、綺麗に整理されていた。机と座り心地のよさそうな椅子があるだけだった。

「家が無駄に広いから、狭い部屋が落ち着くんだ。祖父もそうだったんだと思う。」

倫は本棚を見回した。文学書ばかりかと思ったら、科学書と絵画の本が大半を占めていた。

「すごい・・・これプリンキピアの初版じゃない・・・」

倫は驚きで手で口を塞いだ。倫が読みたかった、絶版になった細菌学の本もある。

「あなたのお祖父様はなんて人なの・・・」

驚く倫を満足気に薫は眺めた。

そのまま手にとった本を読み始めた倫はがちゃりと扉が開く音がするまで自分の世界に入ったままだった。

振り向くと、制服から私服に着替えた薫が、手に紅茶とお菓子を乗せたトレーを持って立っていた。