『6月1日。
彼女と食事をする。生い立ちを聞く。父親はアメリカ軍人、今は何をしているか何処にいるのか不明とのこと。
彼女を見ていると、先の大戦のことを思わずにはいられない。あの忌わしい戦争の名残である。一見弱々しく見えるが、何か信念が感じられるのは彼女もまたあの戦争の犠牲者だからかも知れない。
あの考えが頭をよぎる。』

『6月18日。
私の願望はもはや自分でも抑えることが出来ぬ。思いきって彼女に告げようか。
彼女とて駄目かも知れぬ。しかし、彼女に可能性を感じているのも確かである。
二の足を踏む時間さえ私にはない。』

『7月5日。
父命日。決意する。時期は未定。』


次は4月28日だった。この様子だと翌年の4月28日のようだ。
倫は顔を上げ、薫を見つめた。じっと倫を見つめている。
何か嫌な予感がして唇を噛んだ。再びノートに視線を移す。

『4月28日。
彼女が子供に会わせてくれる。名前をつけさせてくれると言う。迷わず倫と告げると彼女も賛成してくれた。私を許してくれた彼女に、再び悲しい思いをさせるかと思うと胸が痛む。しかし、諦めるわけにはいかない。唯一の子供。』

「唯一の・・・子供?」

倫は意味がよくわからず、思わず声に出した。
薫を見て尋ねる。

「どういう意味かしら」
「次が最後だ。読んでみて」