「もしもし!?」
「こんばんは。今大丈夫?」

久しぶりの薫の声に倫は胸を熱くして、何も言えないでいた。

「連絡しなくてごめん。ちょっといろいろあって」
倫はやっとの思いで小さく「うん・・・」と答えた。

「今から会える?」
「今から?」

倫は戸惑った。キヨの具合が悪い時に遠くへ出掛ける気にならなかった。

「あの日記、訳したよ」
「本当に?どうだった?」
「今は言えない。会って話そう」

薫の深刻そうな声に、倫は心配を募らせた。
ただの恋日記ではなかったのかも知れない。

「わかった・・・。でも、今日キヨちゃんが少し具合が悪くて寝てるの。あまり長いこと出るのは無理だから、うちの近くまで来てくれる?」
「了解。じゃあ、すぐ行くよ」

電話を切って、倫は緊張して体を硬くした。

(ただの日記じゃなかったのかな・・・)


キヨが寝入っているのをもう一度確認して、倫は外に出た。
昼間はまだ夏の暑さだが、夜ともなるとだいぶ涼しくなってきた。
倫は近くの公園に向かった。

落ち着きなくうろうろと歩き回っていたが、薫から電話があり、公園で待っていると告げた後、ベンチに座り薫を待った。

「久しぶり」
「・・・こんばんは」