それから薫からの連絡は途絶え、一週間がたとうとしていた。
倫はいつも携帯を気にしていたが、薫が連絡すると言ったのを信じて自分から連絡するのを我慢していた。

「ただいまー。・・・キヨちゃん、どうしたの!?」
「お帰り・・・」

大学から帰ると、キヨが布団の中で横になっていた。すかさず顔を覗き込む。

「具合悪いの?風邪?」
「ちょっと胸が苦しくてねぇ・・・。なあに、横になってればすぐ治るさ」

キヨは明るく言ったが、顔色は悪かった。

「キヨちゃん、病院行ったほうが良くない?顔色良くないよ」
「病院なんて行くぐらいだったら、家で野たれ死んだほうがましだよ」
「そんなこと言わないで、私も一緒に行くから。ね?」
「大丈夫大丈夫。少し眠るよ」

そういって向こう側に体を向けてしまった。
倫はキヨの細い体を見つめた。
まだ倫が小さかった頃はふくよかで、足腰もしっかりしていた。
今は歳をとり、一回りも小さく見える。
倫はキヨに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

(私・・・キヨちゃんを裏切ってるんだ・・・)

寝入ったキヨの寝息を聞いていると、倫は胸が苦しく、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

ブー・ブー・ブー

携帯が震えた。薫からの着信だった。
倫は慌てて携帯を掴み、外へ出た。