「・・・今から、どこかに行くの?」
「うん。京都に」
「京都・・・!?」
「そうなんだ。だから、今日はちょっと会えない。ごめん」
「京都に何しに行くの?」

倫は薫の行動を不審がった。なぜ何も連絡もなく京都まで行くのだろう・・・。

「大した用じゃないよ。親戚に挨拶に行くだけなんだ」

京都に親戚がいるなんて知らなかったが、公家の家系なら京都にいてもおかしくはない。倫は会って話したかったが、とりえず進路について少しでも話しておきたかった。

「ねえ、アメリカの大学行くのやめるのって、私のせいなのね?」
「・・・なんでそれを・・・」

倫は心の中でやっぱりと思った。

「お願い、そんなことやめて。私のことであなたの大事な未来を変える必要ないわ」
「君のために変えるんじゃない。俺のためだよ」
「だって、そのために頑張ってきたんでしょう?私なら・・・大丈夫だから」

倫は遠く離れても大丈夫だというつもりで言った。
電話越しに薫は少し笑ったようだった。

「本当に俺のため。倫ちゃんと離れていたくないんだ。

それに・・・いや、とりあえずこの話は帰ったらゆっくり話そう。帰ったらすぐ連絡する」

じゃあねと言って電話を切ってしまった。
倫は一抹の不安を抱えて携帯を握り締めた。