ようやく薫が唇を離してくれた時、雨はだいぶ弱まっていた。

倫の瞳を覗き込む薫の表情はいつにも増して色っぽくみえる。
倫は照れて目を反らそうとしたが、その前に寒気を感じてくしゃみをした。

「・・・ごめん、俺のせいで、濡れちゃったね」

薫が倫から離れる。二人の間に空気が流れ、再び腕の中に抱かれたい衝動に駆られる。

倫はこのまま薫を帰すべきか迷った。
家に入れるのには抵抗があったが、周一郎についてちゃんと話さなくてはいけないと思ったし、何よりまだ一緒にいたかった。

「あのね・・・今日、キヨちゃんいないの。旅行に行ってて・・・。シャワーでよかったら浴びていく?その間に服乾かしておくから」

薫がタオルで髪を拭きながら倫を見た。

「一緒に浴びるんじゃないの?」

そう言ってにやりと笑った。
倫は、か~っと顔を赤くして言った。

「バカ!そんなこと言うなら帰ってもらうよ!!」

薫はハハと笑って「冗談だよ」と言った。