「ずるいよ・・・」

(そんなこと言われたら・・・)

倫が苦しげに呟いた。

「え・・・?」

薫は倫の腕を掴んでいた手の力をふ・・・と抜いた。

「私だって・・・!もう引き返せないよ・・・!」

倫はとうとう自分の気持ちを吐き出した。

「倫ちゃん・・・」

「けど、どうしろって言うの!?・・・そんなの・・・諦めるしかないじゃん・・・」

倫は唇を噛んで泣いた。

「倫ちゃん・・・」

薫が倫の頬を両手で包む。

「君が好きだよ」

優しく囁いて倫の頬にキスした。

「・・・今は全て忘れて、俺のことだけ見て」

再び倫の目を覗き込む。

「全て・・・忘れて・・・?」

倫は目の前の薫の漆黒の瞳を見つめて呟いた。

「俺は君が好きだ」

薫がもう一度言った。

(俺のことだけ見て)

倫にはもはや自分の気持ちを抑えることはできなかった。