学園(序)

でも、俺が乾に接する態度はマナーに反するだろう。

龍先輩が上から物を言っているから、俺も便乗してタメ口で話していたけども、本当は目上の方なのだ。

今度から気をつけようじゃないか。

高井教師はロリ嫁を連れて、乾の元へと去っていった。

乾の隣に座ると、乾は変わりなくコーヒーを飲み続けた。

俺達は俺達で、これからの事を考えなくてはならない。

「これからどうします?」

「カラオケー!」

笹原先輩がいの一番に手を上げた。

「食べたばかりなのに元気ですね」

「急に歌いたくなってきたんだ!」

俺は別にいいんだけど、二人はどうなんだろう。

そういえば、吟ネエや龍先輩の歌を一度も聴いたことがない。

興味が沸いてきたな。

でも、自分の興味だけで、歌いたくないという人を無理矢理連れて行くほど外道ではない。

吟ネエはナパームパフェを食べていたので、龍先輩に聞くことにした。

「先輩は、笹原先輩の案はどうです?」

「むー」

アゴに手を当てて、深く考えているようだった。

「歌うのが嫌っていうのなら、俺がねじ伏せますけど」

「良い。たまにはいい経験じゃ」

「いい経験って、行った事ないんですか?」

「一度もないのじゃ」

「ええ!初体験ですか!?」

「そうなるのう」

乾の話を吹っ飛ばすような嬉しさがちょっとこみ上げてきた。

「ちなみに、私の初体験は」

「わあああ!」

吟ネエの初体験の話など聞きたくない。

絶対に、ミラクルに落ち込む。

立ち直ってきたのに、地獄に叩き落されたくはない。