学園(序)

高井教師は、立ち上がって雪那の頭の上に手を置いた。

「こいつは嫁の高井 雪那(たかい せつな)だ」

「えええええ!?」

「その驚きは何やねん!ウチが結婚してたらおかしいんか!?」

「い、いえ」

明らかに小学生にしか見えない。

だが、口に出せば恐ろしい刑罰が待っているので、黙っておく。

「援助交際ですか?」

「言っておくが24だぞ」

成長不足としか言いようがない。

しかし、噂が本当だったとはな。

誰かが流したデタラメだと思っていた。

「センセー、今日はデートですかー!?」

スプーンをマイク代わりに高井教師に質問してるのは笹原先生だ。

噂話が好きな笹原先輩にとっては、いいネタになるだろう。

「言い方を変えたらそうだが、買い物の帰りに立ち寄っただけだからな」

「熱いわ!アツアツよー!」

隣の吟ネエに抱きつきながら、何かしら喜んでいる。

この人、反応が昭和のおばさん臭いよ。

吟ネエは何を考えているのかわからないが、雪那のほうを見続けていた。

どうせ、ロリの振舞い方でも勉強しているのだろう。

「って、あれ、乾じゃねえか?」

高井教師が被害の少ない乾を見つけた。

「知ってるんですか?」

「同じ学校の一つ上の先輩にあたるんだ」

「先輩の割には呼び捨てなんですね」

「俺は許される!」

何を威張って言っているのか。

こういう人が縦社会を潰していくんだろうなと思う。

古い考え方かもしれないが、横社会のなあなあで過ごすのはあまり好きじゃない。

目上の者には丁寧語を使うのが当然だと思っている。

ま、恋人だとすれば許されるかもしれない。

年上の友達でも、親しい仲にも礼儀ありというだろう。

丁寧語を使わなくても言いという先輩もいるけど、それが横社会にしていく。

その時はいいが、長い目で見れば区切りがなくなるかもしれない。

さっき礼儀にはうるさくないとは言ったが、最低限のマナーに関しては気になる方だ。

友達感覚もいいけども、大人としての見本は見せておいてほしいものだ。

龍先輩と乾のような立場であるならば、仕方がないけどな。