学園(序)

「忠告している」

「何で死ぬんだよ?ただの金持ち一家なんだろ?」

前に俺が思っていた、金持ちだから黒というのは当たっているのか?

「金持ちだからこそ危険がある」

「はあ?強盗にでも浚われるのかよ?」

「単純な話ならいい。お前は周りの富豪から目を付けられている」

「まさかー、政略結婚とか、ないよね?」

「さてな」

帽子を深く被り、俺との接触がなかったかのように振舞う。

「おいおい、とぼける場所かよ」

「一つだけ覚えておけ」

「何だよ?」

「今の時代は閨閥(けいばつ)結婚だ」

自分の言いたいことだけを言うと、ファミレスへと歩いていった。

これ以上、質問したところで答えないだろう。

俺は立ち止まったまま、開いた口が塞がらなかった。

もしかして、俺って邪魔者?

龍先輩には突き放す素振りはないけども、実家のほうはわからない。

今時、閨閥結婚ってあるのか?

先輩、自分が権力のための道具にされていると知ったら、どう思うんだろう?

待て待て待て待て。

まだ結婚すると決まったわけじゃないんだよ。

でも、乾の言い方からすれば、先にはあるかもしれない出来事なんだよな。

「やだなあ」

許せないという気持ちはある。

でも、乾の言うとおり、俺の中途半端な気持ちは吟ネエと龍先輩との間を行ったりきたりしているようだ。

そんな輩が、一家の繁栄に安易に口を出せるようなことじゃない。

先輩はいい人だから、家のためなら嫌でも嫁いでしまうのかもしれない。

知らなければ良かったのか、知って良かったのか。

「ち」

いい一日になるかもしれなかったのに、乾の話によって台無しになってしまった。