学園(序)

「こ、コラ、止めぬか」

「あはははははは!部長、チューしよ!チュー!」

笹原先輩に常識がなく、道端では迷惑な事この上ない。

龍先輩が止めたくなるのもわかる。

乾は帽子を深くかぶって、出来るだけ知らぬフリを決め込んだ。

吟ネエは肌の密着を羨ましそうにしていた。

俺はたまには百合もいいだろうとほのぼのと眺めることにした。

龍先輩は笹原先輩に打撃を打つことが出来ないので、軽く抵抗するだけだ。

こちらに助けて欲しいと眼差しで訴えているので、そろそろ止める。

「笹原先輩、次の場所に行きましょうよ」

「あ、そうだね!いこっか!」

誰かが促すとしつこくしないところも、笹原先輩の良いところだろうか。

「はあ、はあ、全く、そなたは恥じらいを持つべきじゃ」

乱れた髪と服を正して、淑女とは何かを教えようとした。

「部長、スキンシップは大切だよ!」

「そうだそうだ!龍は売女の事をもう少し知るべきアル!」

これ見よがしに、吟ネエが笹原先輩の後ろから援護する。

でも、吟ネエのみ論点がズレてるんだけどな。

一番に淑女とは何かを学ばなければならないのは、吟ネエだったりする。

論争はさておき、俺達は昼飯時までに他の店にも回る。

雑貨屋、靴屋などなど。

そこらを回ると、昼時ちょっと前になる。

皆をファミレスで待機させ、アクセサリーの売っている店で一人残った。

滅多にくる事がないので、自分の分と吟ネエの分と龍先輩の分を買う事にした。

二人には何かを上げたいと思う。

誕生日でも何でもないのだが、何かをしてあげたい。

物っていうのも、俗っぽいんだけどな。

吟ネエはともかく、龍先輩が受け取ってくれるかどうかわからない。

そこは押しの一手で突っ込むしかないだろう。

しかし、吟ネエのために買った酒によって、金はあまりないんだけどな。

俺が破滅するほどの物凄く高い物でないならば問題はない。