学園(序)

やる事はないので、女性の流行っている服を見ていた。

自分が着たら何かに目覚めてしまいそうで怖いね。

いやいや、自分の想像をするよりも、吟ネエ達が来てるところを想像しておこう。

しばらくはそれで過ごして、数十分程度は経ったか。

笹原先輩はチュニックとパンツを、龍先輩は笹原先輩に進められた半袖のカーディガンを、吟ネエは高級下着を諦めて、タンクトップを購入していた。

『クロノス』で用事が終わったので袋を下げて出る。

「あははは!いい買い物したあ!」

「行く機会がないとは言えぬが、学校帰りには出来ぬな」

「夜這い用の下着が買えなかったアル」

龍先輩は平日に部活があるし、休日は家の事をしてるもんな。

笹原先輩は結構来てるのかもしれないけどな。

吟ネエはどうだろう。

男を誘うために服装などは整えるから、それなりに買いに来てるかもしれないな。

「乾よ、待たせたのう」

一番被害に遭っているといえば、乾だろう。

数十分間、町の人たちの怯えた目に見つめられながら、無言で仁王立ちし続けていたんだからな。

「構わん」

怒っている風でもなく、いつものトーンであった。

「そなたもすまぬな、つまらなかったであろう?」

龍先輩に申し訳なさそうにされると、こっちまで謝ってしまいそうになる。

「先輩達が目の保養になっててつまらないとは感じなかったですね」

「ずっと見てたんだ!?」

視界の端からキノコが生えてきたように笹原先輩が出てくる。

「え、ええ」

「どう?部長ってバリキュンでしょ!?」

バリキュンの意味がわからないが、可愛いとかそんな感じだろうか。

「目に入れても痛くないくらい可愛かったですね」

小学生じゃあるまいし、否定せずに正直に気持ちを吐き出した。

「あはははは!やっぱりねー!私もギューって抱きしめたくなるもん!」

笹原先輩、言う前から実行してますよ。