その姫は、隣国の王姫でした。

その国の姫は、美しくも傲慢で欲深く残酷な者と有名でしたが、目の前の姫はその噂とは真逆の、謙虚で心優しい姫でした。



それから、2人は毎夜欠かすことなく薔薇園で逢いました。

姫と話すひと時の時間は、心冷たく無慈悲なはずの王にとって、特別になっていったのです。



2人が出会ってから2度目の満月を向かえたある夜、王は、姫に薔薇の指輪を送りました。

そして「妃になってほしい」と告げたのです。

しかし、姫はそれに応えてはくれませんでした。

妃候補として来たはずの姫が求婚を断るなどありえないこと…。

しかし姫は、王がいくら理由を尋ねても、ただ悲しそうに首を振るだけでした。