慎の小さい頃、騎士団に入団した頃、凛と合った頃、どんどんと記憶がすぎていく。 そのほとんどに、マーキスは『悲しみ』を感じた。 相手の記憶を読んでいるとき、その時に相手が感じた感情も流れ込んでくる場合がある。 相手がその記憶に強い感情を抱いていた時に、それは起こった。 慎の場合、そのほとんどが『悲しみ』だった。 まだ十数年しか生きていないその生涯のほとんどが『悲しみ』だと知り、マーキスの心は痛んだ。 そして、もう冷たく成り果てた慎の両頬にそっと手を添え、思いを馳せた。