「女の子に優しくできないうえに、うるせぇんだなお前」

慎は悠長に言う。

「死ね!!」

狼男は鋭爪を慎に向けて振り下ろした。

その瞬間、慎は何も言わず刀を凪ぎ払った。

どっちが速かったのだろう。

凛には分からなかった。

慎、狼男はともに一言も発さなかった。

しかし狼男の体には肩から腰にかけて、亀裂が生じた。

かと思うと、ズルリと音を立てて崩れ落ちた。

赤黒い血が吹き出す。

「・・・」

凛は絶句した。

すごい…

自分はあれに押さえ付けられていた。

そのうえ殺されかけていた。

それを、慎は余裕を見せながら消したのだ。

凛は背筋が冷たくなるのを感じた。

そんな凛に背を向けて、慎は刀を振るい血を払った。