「くそっ…!」

少女は観念したように目をかたく閉じた。



“ガキィィン…!”



「「!?」」


まるで金属同士がぶつかり合うかの様な音に、少女と狼男は同時に驚く。


振り下ろされた爪と少女の体との間に刀が挿入されており、爪が少女を引き裂くのを阻止していた。

刀は男が持っている。


「女の子いじめるなんて最低だね。それでも男?」


その刀を持つ男が言った。

「その声…慎【シン】だな」

少女は呟く。


「あぁ、俺だ。大丈夫か?凛【リン】」


「貴様、何者だ!!」

爪を止められた男がほえる。


「あ?俺?俺は慎って名だよ。聖職者さ。」

さらっと答える慎。


「ちょっ!バカ!敵に正体バラしてどうすんの!」

凛と呼ばれた少女は、焦ったように言う。

「大丈夫!この男はここで殺るし!大体その体勢で言われても説得力ないんですけど」

慎ははぁっとため息を吐いた。


「…っ!///うるさいっ!」

顔が赤くなっていく凛。


「…お前も聖職者か…。ならお前から殺してやるよ!!」

そう叫ぶと狼男は凛の首から手を外し、慎に爪を向けてきた。


「あんたに俺は殺せない」

またもさらっと答える慎。


その言動が男のカンに触ったらしく、「うおぉぉっ!!」と叫びながら男は慎に突進してきた。


「調子にのったな、お前!!引き裂いてやるよ!!」

狼男が爪を振り上げた。