聖職者


だが、やり場のない感情が自分の中にある。

自分はそれを押さえ込めずに李楼にぶつけている。

そう思うと、さらに自分が嫌になる。

その時、本部長室の入り口の方から女の声が聞こえた。

「それは冷たすぎないかぃ?」

凛も李楼も、驚いて視線をそちらに向ける。

「ルイ元帥・・・」

李楼が呟く。

彼女の名前はルイ・マーキス。

漆黒の騎士団の元帥の一人だ。

緑の目、見事なブロンドの髪の持ち主である。

歳は32歳だが、本人は18歳だと言い張っている。

凛にとって、母親のような存在であった。

「ルイ元帥、お戻りだったんですね」

李楼が苦笑いをしながら、ルイに話かけた。

「まぁね、ついさっきよ。ちょっと近くに用があったからよっただけ」

腕を組み、扉にもたれながらマーキスは言う。

「マーキス!!」

凛は泣きながらマーキスに抱きついた。

「あ〜ぁ、可愛そうに。こんなに李楼に泣かされちゃって」

マーキスが冗談混じりで言う。

普段、「ルイ元帥」と呼ばれている彼女だが、凛だけには「マーキス」とファーストネームで呼子とを許していた。