聖職者


凛の目に、じわりと涙が溢れる。

集中力は途切れて、空間の歪みも消えてゆく。

そんな凛を見て、李楼は「しまった」と思った。

「怒鳴ってごめんね、凛」

「・・・ッ」

凛の涙は止まらない。

李楼は凛の肩に手をおき、凛を再びソファに座らせた。

「あの2人を助けたい気持ちはよく分かる。だが、君は今冷静じゃない」

李楼は俯く凛を見つめ、言う。

「本部長の判断として、今君を任務につかせるわけにはいかない。危険すぎる」

「京さんと慎を見殺しにする気?!」

凛は思い切り叫んだ。

「もう死んでるかも知れない」

李楼が冷たく言い放つ。

その顔からは何の感情も読み取れない。

「本部長はなぜそんなことを言うんだ!!京さんも慎も仲間だろう!!」

凛は涙で歪んだ視界のなかの李楼を思い切り睨んだ。

だが、李楼は顔色一つ変えない。

わかっている。

李楼は本部長と言う立ち場上、これ以上被害をだしたくないのだ。

否、出してはならないのである。

凛にはそれがわかっていた。