刀を向けられた男はニヤリと笑う。


「消えろっ!!」

色気のない言葉を少女が叫ぶ。

「(よしっ!これはいけるっ!)」

少女は男を消す確信を持った。


ところが男はその攻撃をするりとかわす。

それどころか、突っ込んだスピードのせいで体勢が戻らない少女の背後に回り込み、少女の首を後ろから左手で掴むと近くの民家の屋上のコンクリートに叩きつけた。

少女と男が空中戦を繰り広げていた場所から落差5メートル。

「かはっ…!」

少女の口から少量の血が飛ぶ。


「ふっ、聖職者のレベルもたかがしれてるな。」

男は少女の首をコンクリートに押さえ付けたまま、空いている右手の爪の形を変え狼のように鋭く尖らせた。

その手を高々と闇空に向けて伸ばす。


「(ヤバい!このままじゃ殺られる!)」

少女は抵抗しようと体を動かそうとする。

“ズキンッ…”

「(ぐっ…!)」

体中が痛い。
どうやら叩きつけられた時に、相当な痛手を受けたようだ。

少女の刀も叩きつけられた時に遠くに飛んでしまい、今の少女では手も届かない。


「死ね!!聖職者!!」

男は大声で叫びながら手を少女に向かって振り下ろした。