倒れている男はひどい様子だった。
肩には深い切り傷があり、肉がえぐられていた。
力なく床におかれた腕は、普通ではありえない方向に折れている。
靴は片方脱げ、頭も強く打ったようだ。
「君たちは仕事に戻ってくれないか。そもそも見せ物ではないのでね」
李楼が人だかりに向かって、低く怒りを込めたような声でそう言った。
とたんに蜘蛛の子を散らしたように人だかりが消える。
だが、何人かは遠くに離れてこちらの様子を伺っていた。
李楼はそんな人々を見て、ふぅとため息をついた。
その息には「仲間が傷ついてるのがそんなに面白いのか」という、怒りが込められていた。
李楼の心中を察したのか、凛の後ろに立っていた各班の班長は、その遠くの見物客を完璧に1階から追いやる。
わざわざ自分たちが付き添い、仕事場に戻していた。
「毎回、班長たちには助けられてるな」
ぽそっと李楼が呟いた。

