左胸の部分には、実物より細かな聖痕が描かれていた。

まだ自分が小さかった頃、この聖痕があるために幽閉されていると思い込んでいた。

聖痕が憎くて、何度も傷を付けて消そうとした。

だが、何度傷を付けても聖痕が消えることはなかった。

団服が仕上がり渡されたときは、李楼が本部長になる前だった。

当時の本部長から渡されたとき、凛は完璧な兵器になろうとしていた。

心なんて必要ない、感情なんて無用だと。

団服には「聖職者として人間を守りこの世界を守る」という決意が込められている。

しかし、凛は人間の為に戦いたくはなかった。

人間は自分達が聖職者に守られていることを知らない。

それ故に生まれたばかりの聖職者を殺そうとする。

そんな無知な人間を救う価値はない。

本気でそう思っていたからだ。

それは凛が12歳になったときの、生まれて初めて心に決めたことだった。