「来た」


少女は静かに呟いた。


“ウオオオォォン!!”


どこからか、まるで狼の遠吠えのような声が響き渡る。


少女は手にしていた刀を鞘から抜いた。

月夜に照らされたその刀は、妖しくも美しく輝いている。


それまで静かだったこの街に、いきなり突風が吹いた。

と、同時に空中に体長1メートルほどの狼が現れた。

眼を血走らせて大きな牙を剥き、血に餓えているかのようなその狼は低く唸り声をあげている。



「・・・」


少女は刀を構える。


突如狼が空中を走りだした。

勢いをつけた狼は速さ増し、少女のいる塔へ近づいてくる。

狼は勢いをさらに加速し、獰猛な牙を剥きだして少女に突っ込んできた。

少女も塔を離れ、空中を狼に向かって走りだした。