聖職者

慎、凛、李楼の間に沈黙が流れる。

それぞれ何かを考えているようだった。

慎が口を開く。

「ねぇ、気になることがあるんだけど。身体に傷を付けずに、脳を壊すことってできんの?」

李楼が頷く。

「そうなんだ。科学班もそこに着目した。普通に考えたら人間にも、魔獣にもできない」

「じゃあ、一体誰が?」

凛が聞く。

「少なくとも、騎士団が知らないものだ」

李楼も考えながら言う。

「Bランク以上の魔獣ってこと?」

そう言ったのは慎だ。

「いや、魔獣とは限らない。“新たな敵”かも知れない」

凛がさらりと言う。

「ジャック元帥の背中には『神は邪悪、この手で消去せん』と彫られていたんだろう?魔獣がそんな手の込んだことをするか?」

凛のその言葉に、慎は頷く。

「そうか。魔獣なら元帥を吊さずその場で食べるな」