聖職者


「凛?!」

マーキスは驚いて凛を見た。

凛は目を恐怖で見開かせ、ある一点を凝視している。

マーキスはその視線を追った。

その先には駆けてくるヴォルドールがいる。

マーキスは舌打ちをした。

なぜ奴がここにいる?!

そう、マーキスは凛を心配するあまり、どうでもよいヴォルドールの存在を無意識に消していたのだ。

そのため、自分の後を着いてくるヴォルドールに気が付かなかった。

「お前は来るな!!」

マーキスはヴォルドールに向かって叫ぶ。

だが、そんなことでヴォルドールがとまるはずもなかった。

「大丈夫かね?!」

しゃがんで震える凛の肩を支えた。

どうやら、自分が原因で凛が震えているとは気付かずに、リョウが原因だと思っているようだ。