マーキスはとにかく走った。
だが、力が使えないため、いつもの様に疾風の如く駆け抜けることはできない。
それは余計にマーキスの体力を奪う。
マーキスはちんたらと走っている自分に嫌気がさした。
と、同時に、もしも凛がリョウと会ってしまったらと思うと気が気ではなかった。
もちろん、数学的な確率から言えば、凛とリョウが出会う確率は低かった。
ヴォルドールの情報を鵜呑みにした訳でもない。
それでも、マーキスは直感で凛とリョウが出会う事を感じていた。
それは、ただ単に凛に対する愛情から来るものなのか、長年聖職者として戦ってきた経験から来るものなのかは分からない。
銀の力、リョウの存在、異能を持った魔獣の出現、そして、凛とリョウが出会う事。
分からない事柄が多すぎて、謎が謎を呼ぶ。
マーキスは走りながら舌打ちをした。

