聖職者


何なの?と凛は思う。

だが、狼達は軽く困惑している凛を余所に堂々としていた。

白、または銀とも言える艶の良い毛並みをした彼らは、どれも美しかった。

彼らの中で地位が上なのだろうか、凛に近付き、最初に頭を下げた狼が凛の目をじっと見てくる。

その力強く澄んだ瞳から、凛は目が離せなかった。

すると、その狼はくるりと凛に背を向け、立ち去ろうとする。

だが、数歩進むと後ろにいる凛を振り返った。

まるで「付いて来い」と言うかのような仕草に、凛は従うことにした。

正面にいる狼に付いていく。

凛が歩きだすと、周りで様子を見ていた狼達も凛の周りを囲み、歩きだした。

それは、はたから見たら異様な光景であっただろう。

何せ、15歳の少女が八体もの狼に連れられ歩いているのだ。

しかし、凛は狼達に対して違和感を抱かなかった。

むしろその逆だった。

任務の対象であるはずの彼らなのに、不思議と仲間意識があった。

それは、騎士団の仲間に対する意識とさほど変わりはなかった。