ローカルな汽車が到着した駅は、すでに西欧研の半径50キロメートル内に入っているため、力が使えなかった。
そのため、凛は仕方なく徒歩で移動した。
30分程歩いただろうか。
やがて、前方に森が見えてくる。
日が傾きはじめ、周りの山に夕日が映えて絶景だ。
だが、今の凛には景色を楽しむ余裕は残されていなかった。
人通りなどない一本道を、ひたすら森に向かって進む。
当たり前ながらこの森に入り口などなく、だんだんと木々が茂り道が鬱蒼としてくる。
気が付けば、凛は辺りを木々に囲まれていた。
どの木の幹も地中の養分をすべて吸い付くしたかのように肥えて太かった。
異様に多い葉も日光を遮り、森は肌寒く薄暗い。

