「お嬢さん、珍しい格好をしてるじゃないか。いったいどこへ行くんだい?」
駅のホームに作られた木の椅子に腰掛けた中年の女性が凛に問う。
「ここから外れの森です。北東に大きな森がありましたよね?」
それを聞いた女性は目を見開いた。
「お嬢さん!一人で行くのかい!?」
「そうですが」
「悪いことは言わないよ、よしたほうがいいよ」
「どうしてです?」
「最近、あの森は物騒だからさ。あの森の近くに住む人間が次々と行方不明になったり、殺されたりしてるのさ。みんな、森の主の呪いだって恐がってるんだよ」
女性はそう言うと身を震わせた。
一方で凛は考え込む。
「(森の主って何?)」
凛が騎士団から受けた任務の情報には、そんなことはなかったのだ。

