「…ドイツ郊外の森林は騎士団も研究に使っている場所の近くではあるまいな?」
ヴォルドールは誰となく尋ねる。
「お察しの通り、騎士団研究場所の近くですが…」
李楼が不思議そうに答えた。
それを聞いた瞬間、ヴォルドールはがくりと脱力する。
「私が依然本部長の職に就いていた時、ある報告が入った」
ヴォルドールは腕を投げだし、天井を仰ぎ見ながら話す。
「研究所郊外の森に以上に強い周波数を感知した、とね。その力が強すぎて無線ゴーレムが機能しなくなったそうだ」
「まさか…」
李楼が声を上げる。
騎士団科学班が開発した無線ゴーレムは、どこの機関よりも最先端のテクノロジーを生かした機器だった。
それも、力を使う聖職者と同行しても異常が起きないような、周波数に関しては特殊な作りになっていた。
聖職者が戦闘で力を使うたびに無線ゴーレムが通信不能となっては意味がない。

