窓の外の嵐はさらにひどくなっていた。

李楼から一通り話を聞いた慎と凛は何も話せずにいた。

元帥の名はジャック・ハーバー。

元帥の亡骸が発見されたのは3日前、騎士団側が遺体を本人だと確認し引き取ったのはつい先程だと言う。

フランスのパリの一画にある、何の変哲の無い公園だった。

近くには、エッフェル塔があるだけの公園だ。

その公園の一番太いであろう木に上下逆さに宙吊りにされていた。

特に目立った外傷は無く、上半身は裸にされており、背中には「神は邪悪、この手で消去せん」と彫られていたそうだ。

ものが言えない二人に、李楼は付け加えるように言った。

「慎に凛の任務に行ってもらったのは、このためなんだよ。今回の凛の任務は簡単だけど、問題は場所だ」

「そうか、元帥が亡くなった場所の近く!」

わかったように慎が言う。

凛も納得したようにうなずく。

「その通り。まだ犯人が分からないからね、そんな現場の近くに未成年の女の子が真夜中にいたら何が起きるか分からない」

凛は少し安心した。

自分が聖職者として半人前だから、慎が来たんじゃないんだ。