「そんな…」
それぞれが数ページ読んだほどだろうか、ラスホォードが呟いた。
その顔は驚愕と悲哀が表れていた。
「どうしたの?」
李楼が尋ねる。
「何かあった?」
「いぇ…、そうでは無いんです。…ただ、…噂には聞いていたけど、ここまでひどかったとは…」
「…そうだね」
李楼は静かに呟いた。
「これをあの子は一人で生き抜いてきたんだよ」
「……っ」
ラスホォードは医療班長である。
医療の視線からもこの資料を見たのだろう。
確かに、これだけの量の薬物を、しかも毎日投与するなど非人間行為であった。
重苦しい沈黙が流れる。
それをマーキスが破った。
「私はヴォルドールのやり方は気に入らない」
「…僕もです」
ラスホォードが言う。
「だけど、彼は凛の可能性に気付いていたのかもな」
「……」
そしてまた沈黙が流れた。

