聖職者


マーキスは手にしていたグラスを睨むような視線で見つめた。

そして残っているワインを一気に飲み干した。

「…あー、酔えないわね」

あれだけ飲んで?と李楼は思う。

空いたワインボトルが、傍らのボトルの山に追加された。

「(凛があんな状態なのに、酔えるわけ無いか…)」

マーキスは、そう心の中で呟いた。

最後に見た凛の瞳を思い出す。

あれは悲しみや絶望ではなかった。

何か、強い大きな思いを秘めていた。

とてつもなく嫌な予感がする。

凛は日頃から、子供のような言動をとることがあった。

それは普通の15歳の少女なら許される範囲のことだったが、聖職者では許されない。

一つの判断ミスで命を落とすかもしれないのだ。