聖職者


「…今は、何もできません」

「そうでしょうね」

李楼の自白めいた呟きに、しれっと答えるマーキス。

「ですが!!」

ラスホォードが反論する。

マーキスは冷たい視線を投げ掛けた。

びくり、と一度肩を震わせたラスホォードの口が止まる。

「じゃあラスは何かいい案を持っているのかしら?」

「それは…」

気まずくなり、閉口するラスホォード。

どうやら無いらしい。

マーキスはその姿を見て、ため息を吐いた。

「騎士団を心配する気持ちは分かるわ、ラス。でもね、敵は一人じゃないかもしれないのよ?」

「……っ」

「最悪の場合、全員が敵かもしれないのよ」

「っ!!」

ラスホォードは驚きのあまり目を見開いた。

“全員が敵?”

そんな、ことが起これば。

騎士団は本部だけでなく世界中で潰されるだろう。