慎と凛は薄暗い廊下を歩いていた。
気が付けば、外は嵐になっていた。
そして、本部長室の前に辿り着く。
だが、慎は扉を開けず、黙って立ち尽くしていた。
「どうしたの?中に入らないのか?」
凛が問う。
「いや、なんか嫌な予感がするんだよね」
「は?」
「凛が開けてよ」
慎は後ろを振り替える。
しばしの沈黙が流れる。
凛はしかたない、と言うように一度ため息をつき、扉を開けた。
中は明るかった。
しかし、そこは部屋と言うより資料室と言った方が合うかもしれない。
高すぎる天井に壁一面付けられた本棚を、びっしりと本と紙が埋めている。
中央に置かれた本部長のデスクも資料で見事な山を作り出している。
床でさえ、足の踏み場がないほど紙が散乱していた。
唯一、紙に埋もれず無事だったのはアンティーク調のソファだった。

