何かしらの術を使い、気配が消せる。
それはつまり聖職者か、あの特異体質の魔獣しかありえない。
だが、今騎士団にいる聖職者は凛とマーキスのみ。
凛が盗み聞きをするのは考えにくかった。
凛には全ての情報を話したし、盗み聞きなどしなくても直接聞きにくるだろう。
そうなると、残る可能性は特異体質の魔獣のみ。
「ですが、そんなことが本当に?」
「ありえるよ」
ラスホォードは信じられない、と言う顔をしている。
マーキスはさらに一口、ワインを口に含んだ。
「ねぇ、李楼?」
「…ありえますね」
李楼はこれ以上ないほど苦々しげに呟く。
騎士団本部の最高責任者であり、団員の安全を守らなければならない彼にとって最悪の事態が起きたのだ。

