聖職者


「李楼、最近騎士団内で何か変わったことは?」

天井を仰いだまま、緊張の糸が切れ疲れたような表情のマーキスは、声に慎重さを重ね尋ねた。

「?いえ、特にありませんが…」

一人どっと疲れたようなマーキスを見て、李楼とラスホォードは顔を見合わせる。

意味が分からない、と。

「あの、ルイ元帥。酔いが覚めたんですか?」

ラスホォードが尋ねる。

「酔い?あぁ、最初っから酔ってなんかいないわよ」

「え?」

「あれ、全部演技」

「は?」

ラスホォードは訳が分からず混乱する。

先程までのベロンベロンに酔っていたのは演技なのか?

何のために?

マーキスはテーブルのうえに置かれたグラスを取り、厳しい表情を崩さぬままワインを口に含んだ。