聖職者


「それでねぇ〜…」

次にワインのボトルを手に取り、説明を始めるかのように見えたマーキスだが、そこで会話をきる。

その顔つきは、先程までの酔いはなく、普通の顔に戻っていた。

いや、普段よりも格段に険しい。

半分睨むようなその瞳はリビングの扉を通り越し、玄関の扉に向けられていた。

明らかに変わりすぎたマーキスの姿に、ラスホォードは声をかける。

「ルイ元帥?どうかされましたか?」

しかしマーキスは答えない。

少しの沈黙があり、ラスホォードが再びマーキスに声を掛けようとしたとき、マーキスが口を開いた。

「行ったか…」

「え?」

その小さな呟きの真意が分からず、ラスホォードは聞き返す。

マーキスは小さな呟きのあと、大きなため息を吐き天井を仰いだ。