妙に落ち着いている凛を見て、李楼は驚いていた。
もっと取り乱すかと思っていた。
記憶を取り戻したからだろうか。
凛は二人の死を理解しているのか?
自分の命より大切に思っていたのに?
マーキスもそんな凛の様子に驚いたのか、そっと離れた。
そして、声をかける。
「…凛?」
「ねぇ、マーキス」
「何?」
「記憶は読んだ?」
「えっと…」
妙に強く、しっかりとした口調で尋ねてくる凛に、マーキスは驚いた。
そして、違和感を覚えた。
だが、目を見るかぎり凛の意識はしっかりしている。
「どうなの?」
「…読んだわ。そのことについても話さなきゃね」
そう言って、マーキスは話し始めた。
この時感じた凛に対する違和感は、話していくうちに薄れていった。
だから、誰もが気付かなかった。
凛が胸のうちに秘めている思いに…