隣ではマーキスが心配そうに見ている。
医療班長はマーキスに対して怒りを感じていた。
なぜ凛を夕食に誘っておきながら、ヴォルドールと部屋で話していたのか。
凛とヴォルドールが会ってしまうことを考えなかったのか。
本当に凛のことが大切なら、こんなことにはならなかったはずだ、と医療班長は考えていた。
少なくとも、自分だったら凛に対してこんなことはしなかった、と。
だから、あえて心配するマーキスに凛の様子を告げなかった。
凛の手を包み込むように温かく握り、やさしく話し掛ける。
「凛さん、僕を見てください。もう大丈夫ですよ」
医療班長の言葉が届いたのか、凛は瞳の焦点を医療班長に定める。
それを確認した医療班長は、やさしく微笑んだ。

