聖職者


「盗み聞きですか?それは感心しませんな」

ヴォルドールはそう言うと凛の腕を掴み、座り込んでいる凛を無理矢理立たせた。

「…っ……ぁ…っゃ…」

無理矢理腕を捕まれた凛はその痛みに顔をしかめ、同時にヴォルドールに拒否反応を示す。

だが、身体が完璧に強ばり、思うようにヴォルドールの手を払い除けられない。

その弾みでバランスを崩し、腰を床に打つ。

ヴォルドールは情けない凛の行動に大きなため息を一つつくと、再び凛を立たせようと手を伸ばした。

凛はその手に気付き、ふと顔を上げる。

すると、また、過去の出来事がフラッシュバックしてくる。

6歳まで生活していた檻で、そこから凛を出したのはヴォルドール本人だった。

今の状況と同じように、しゃがんでいる凛に手を伸ばしたのだ。