リビングの扉の前で、凛は固まっていた。
その顔はひどく青ざめ、身体は小刻みに震えている。
研究対象から抜け出せたあの日、マーキスがこれまでの真実を教えてくれた。
凛が研究の対象として捕えられていた日々の中で、度々凛を見にきていた男が一人いた。
彼こそがヴォルドールだったのだ。
いつも高みから見下すようなあの視線はいつになっても忘れることができない。
あの日しか聞かなかったヴォルドールと言う名も、毎日聞いていたかのようにしつこく頭に響いてくる。
凛は震えのあまり立っていることができず、脱力したようにしゃがみこんだ。
その時、リビングの扉に触れてしまい、きぃ、と小さな音を立てて扉が閉まりかけた。

