聖職者


「…やだ、帰ろう」

急に恐くなった凛は、直ぐ様移動術のための空間を作り出そうとした。

だが、うまくいかない。

特別焦っているわけ出もないのに、術は発動しなかった。

幾度か術を発動させようと試みてる時、凛は誰かに声をかけられた。

「何してるの?お姉ちゃん」

凛は驚いて後ろを振り替える。

そこには一人の子供がいた。

低い背丈にサラサラとした茶色の髪。

潤んだ黒い瞳に整った鼻筋と口元は完璧すぎるほど可愛い。

「(いつのまに…)」

凛は背中に冷たいものが流れるのを感じた。

この子供、気配もなく背後に回ってきた。

強ばる凛の顔を見て、その子供は可愛い顔に似合わないニヤリとした笑いを浮かべた。