聖職者


どの位そうしていただろうか。

ぼんやりとしていた凛は、はっとしてまわりを見渡す。

すぐに異変に気付いた。

真昼の広場に人が一人もいないのだ。

自分だけが広場にいた。

「え?」

あまりの奇妙さに凛は驚いて噴水の縁から腰をあげる。

ありえない光景だった。

噴水の水音が妙に響く。

いつのまに人がいなくなったのだろう。

いくらぼんやりとしていたとは言え、気付かなかったとは、聖職者として問題だ。

周りの人間の気配に気が付かないのだから。